インドネシアでは6つの宗教が公的に認められており共存しています。
その中でもイスラム教は国民の9割を占めており、インドネシア全体の雰囲気を確定づけていると言っても過言ではありません。
首都であるジャカルタはインドネシアの中でも革新的な街ではありますが、街を歩くと「ヒジャブ」と呼ばれるスカーフを頭に巻いた女性たちにもたくさん出会います。
旅行中に礼拝をおこなう人々を見かけることもあるかもしれません。
ただ、日本ではイスラム教徒は少なくめずらしい宗教ですので、あまりイメージが湧かないという方も多いのではないでしょうか?
また、ISによるテロが増えていることもあり残念ながらイスラム教全体に対して誤解したイメージを持つ方もいるかもしれません。
実際に現地でムスリムの方々と触れ合うと気さくでフレンドリーな方にたくさん出会います。宗教は違えども中身は同じ人間です。
必要以上の緊張や偏見は旅の楽しみを半減させます。
これらを無くすためにはまず相手のことを理解することが必要です。この記事ではイスラム教について簡単に説明します。
本記事の目次
イスラム教の特徴
イスラム教とは唯一絶対神のアッラーを信仰し、預言者ムハンマドが残したコーランの教えに従う一神教です。イスラム教徒のことをムスリムと呼びます。
彼らの宗教としての特徴は「六信五行」と呼ばれる六つの信条と五つの行動義務です。五行とは「信仰告白(シャハーダ)」、「礼拝(サラー)」、「喜捨(ザカート)」、「断食(サウム)」、「巡礼(ハッジ)」のことを指します。
日本人から見て特徴的に映るのは「礼拝(サラー)」と「断食(サウム)」でしょう。

礼拝(サラー)
イスラム教徒の方々がお祈りを欠かさないことをご存じの方は多いのではないでしょうか。
彼らは原則として1日5回のお祈りを行います。日々仕事や家事をしていく中でも、時間を取っ手お祈りをします。
また、男性の場合は金曜の昼に「集団礼拝」として少し長めのお祈りをささげる習慣があります。
この集団礼拝場所の関係上、道路上や私道、さらには駐車場などで行われることもあり、旅中で出会うこともあるかもしれません。
断食(サウム)
次に「断食」についてですが、イスラム教には一年に一度「ラマダーン」と呼ばれる断食期間があります。
ラマダーンの時期は原則的に日が昇ってから日没まで食事と水分補給を断ちます。
日の出前に起床し、家族で食事を取った後は日没までは何も口にしません。日没後には友人や家族と一緒にまた食事を取ります(一緒にご飯を食べるということはイスラム教の方にとってとても大切なことです)。
例外的に「けが人」や「妊婦」、そして「力仕事の従事者」などは日中の食事を許されます。また、日中に脱水症状が起こり死の危険を感じた時なども食事や水分補給を許されます。
厳しいラマダーンの後は「レバラン」と呼ばれるムスリムの長期休暇に入り、各人旅行や帰省を楽しみます。雰囲気的には日本のお正月に近いかもしれません。
レバランについてはこちらの記事で詳しく触れています。
食事における禁忌
信条と行動義務以外の特徴として挙げられるのが彼らの「食」に対する考え方です。
彼らの食に対する最も根源的な教えが「ハラル(ハラール)」という考え方です。
ハラル(ハラール)とハラム(ハラーム)
ハラルは「(神に)許されているもの」という意味で摂取しても大丈夫なものを指します。逆にハラムは「(神に)禁じられているもの」という意味で摂取を禁ずるものを指します。

ハラム以外のものがハラルという認識でも相違ありません。
何がハラムかというのは地域や宗派、さらには家庭での教えによっても差がありますが、共通してNGとされているのが「豚」です。
コーランの中で豚は不浄の生き物とされており、豚肉や豚に関するもの(ラードなど)の摂取を一切禁じています。
もう一つの大きな禁忌が「アルコール」です。
イスラム教の考え方では酔っぱらうことは怠惰なことと捉えます。アルコールの度数は関係なく、酔うことを目的にアルコールを摂取することは禁じられています。
酔うことを目的としていないアルコールについては考え方がわかれますが、調味料としてのお酒やワインもNGとする人が大半です。
その他ハラムな食べ物としては犬や血液、爬虫類などがありますが、どこまで対応するかは地域や宗派、そして個人の考え方によって変わります。
女性の髪の毛を隠すヒジャブ
イスラム教のイメージとして語られることも多い女性が頭に巻くスカーフのことを「ヒジャブ」と呼びます。

イスラム教の教えでは夫や家族以外の男性の前で髪の毛を晒すのはよくない、とされており、女性は外出する際にヒジャブを身につけます。
ただ、ヒジャブを付ける年齢的なタイミングは家庭によって異なり、最近では大人になってもヒジャブを付けないで通す女性も増えています。
ジャカルタは比較的「ソフト」なムスリムが多い
首都であるジャカルタには国内外から様々な人種、文化が入ってきています。食べ物はもちろん、ファッションでも日々世界的なブランドが進出してきます。
その影響を受けてかジャカルタでは若者を中心に比較的柔軟なムスリムが増えていると言われています(※)。
※インドネシアのムスリムはソフトムスリムと形容されることもあり、マレーシアや中東と比べて柔軟な人が多いと言われています。
物事の是非はここでは述べませんがジャカルタではお酒を飲むムスリムも多いですし、仕事が忙しければお祈りをしない方もいます。ただ、「豚」については共通して禁忌的な認識を持っている方が多いです。

最後に
こうして書くとあらためて決まり事が多い特種な人々のように感じるかもしれませんが、実際は私たちと何ら変わらない普通の人たちです。
最低限の知識を教養として押さえておけば、過剰に気を使う必要はありません。
私の私見ですが、ジャカルタへ訪れるのはイスラム教の方々と触れ合い、理解する絶好の機会だと思っています。
ぜひ旅の中で機会あれば話しかけ、交流してみてください。