インドネシア/ジャカルタの生活や文化

執筆者: jakameshi

インドネシアで禁酒法がまた審議されていて呆れた件

2018/02/01

「禁酒法」なんていう時代錯誤も甚だしい法案が現在ジャカルタで審議されています。

▶インドネシア、まさかの「禁酒法」審議の衝撃(外部サイト)

内容は「外国人も含みインドネシア国内のすべての場所でのアルコール飲料製造、流通、販売、消費、所有を禁ずる。破った場合は最長で禁固刑10年。」というもの。

ジョコビさん筆頭の連立与党は反対しているものの、彼らも「禁止ではなく規制強化しよう」という態度なので規制がまた進むのでしょうかねぇ……

 

法案の目的は健康被害を避けるため

alcohol-428392_640

今回の法案の起案理由は「健康被害を避けるため」とのことですが、ここがそもそもいかにイスラム系党政治家が現実を見れていないかを露呈していますよ。

彼らが考える「健康被害」というのは「劣悪な合成酒で死んでしまったり後遺症を持ってしまった若者」を指しています。市場では主に「オポロサン(Oplosan)」という名称で販売されている、昔の戦後日本で言うところの「バクダン」と呼ばれたような化学成分たっぷりの酒(ちなみにバクダンは飲み過ぎて失明する人、とかがいたらしいです)。

定期的にニュースでも目に入り、「10人が病院に担ぎ込まれて全員死亡」とか悲しい事故が起き続けています。死亡数が上がってきたというニュースもありました。しかもジョグジャかよ。

▶Yogyakarta oplosan death toll rises again(外部サイト)

 

押さえつけ過ぎるから反発が生まれるんじゃないですか?

information-boards-105193_640

インドネシアを外国人の目から見てていつも思うのは「規制かけすぎるから反発が起きるんじゃないの?」ということです。

オポロサンの話って「売ってる場所がないし、あったとしても高くて買えない」から若者がそこに流れてる話だと思うのです。

なので今売っている酒を禁止して消した所でさらに密造酒への依存度が高まるだけで事態を悪化させるんじゃないでしょうか。

「酒なんてものが目の前にあるからダメなんだ!酒も酔っ払い外国人も目の前から消えれば無くなるはずだ!」

という意見もあるのかもしれませんが、そもそもバリ辺りでは自分達で伝統的に作って飲んできた酒もありますし、インドネシアでは数世紀に渡りお酒を宗教儀式で使う文化があるそうです。

また筆者が強く思うのは、このグローバル&インターネット社会で世界はつながっていますからアルコールに対する認識や憧れは消せないのではないでしょうか。

逆に「自分たちだけ飲めない」というさらに辛い精神状況になってしまわないだろうか。

また、オポロサンには健康問題だけではなく、別の問題として未成年飲酒問題酒飲みムスリムの問題もありますが、どうやっても不良というのは出てくるものだと思います(不良と教義逸脱を一緒に論じるのは少し乱暴かもしれませんが……悪しからず)。

話すと長くなるのではしょりますが、不良は自由な社会の対価のようなものなのである程度社会は容認すべきであり、「安全な不良」の道を逃げ口として用意しておいてあげるのも大切なのでは、という持論があります。オポロサンは危険すぎる。

(個人的にはオポロサンを潰すには、不味くてもいいので安いウイスキーを国産で作ってあげるのが一番効くと思ってます。)

 

前回のビール販売制限の時もずれまくっていた

angel-1502351_640

今回の禁酒法云々の前に、昨年施行された、外国人と酒好きインドネシア人の間では「悪法中の悪法」と呼ばれている「ビールをミニマートで販売しちゃいけません令」もずれまくりでした。

制定理由は同じく「若者をアルコールの健康被害から守る」ため。だからビールをコンビニや小さいスーパーで売っちゃだめよ、という話。

たしかジャカルタ知事のアホックさんだったかと思うけど「人はビールで死んでいるわけじゃない」的な発言をしていて「この人を支持しよう」と思ったのも記憶に新しい…。

外国人からの観光収益がメインのバリではこの法令に猛反発(たしかバリだけ例外措置になったはず)。制定された2015年のインドネシア系ビール会社が作るビンタンビールの売り上げは「40%減」

結局オポロサンの死亡ニュースは消えず、消えたのは「コンビニのビール」、そして「ビンタンビールの売り上」と「税収入」でした。

この法令は「撤回する」とされたものの、いつ撤回されるのかはわからないままです。

 

イスラム系政党は自分たちのことしか考えてないでしょ

i-67355_640

この一連の酒を禁止する動きは、イスラム系政党が「健康のためだ」とか言っていますが、結局は「イスラムの国としてあるべき姿にしたい」というのが本音でしょう(もし本気で健康のためだ、と思っていたらそれはそれで相当マズいですよ)。

本気で宗教に根差した国造りをしていきたいのか、それとも政権を取るための手段としてイスラムポピュリズムに走っているのかはわかりませんが、たしかにイスラム教の人々は多いので「イスラムのあるべき姿に!」と叫べば支持者も出てくるかもしれません。

ただ、その選択が国にとって良いのかどうかというのは別の話だと思うんですよね。

自分達の政党、もしくは本気でイスラム教の人々のためを思っての行動だったとしても、自分達の支持者であるイスラム教の人含む国民全体にとって良いことなのか?というのは別なのかと。

 

政治家たちは自分達の強みを理解しているんだろうか?

boss-2205_640

インドネシアのイスラム政党はもっと冷静に自国を分析すべきじゃないか、といつも思います。「対処療法」的な動きや「人気取り」的な動きが多く、先のことを考えていない印象を受けます。

あまり外国人がガヤガヤ言うところではないのかもしれませんが、どうも国外からの期待値と国内の動きに「ずれ」がある。

この「ずれ」に対しては外国人だからこそ言えることもあるはず。

諸外国がインドネシアに注目するのは、2.5億人の巨大人口と2030年にピークを迎える人口ボーナスが生み出す内需が一番の理由でしょうが、これだけではありません。

イスラム国家でありながら政治と宗教を切り離し、民主主義を実践する「イスラムマーケットの可能性を探るモデルケース」として注目されている、という一面もあるはずです。少なくとも筆者がインドネシアに関わることを決定した理由の1つにはなっています。

イスラムが人口の9割を占めながらも他の宗教とうまく共存しているというのはとても素晴らしいことです。数千の島々、数百の民族をまとめて一国としてキープしているのも素晴らしい。インドネシアの魅力はこの多様性の共存だと思うんですね。

それが今からすべての方針をイスラム教だけに合わせて進んでいったら、内部も崩壊するし、外から見た時も「その他一国と同じ」扱いになってしまいますよ?

 

最後に

そういう意味でこの禁酒法が万が一成立した時のインパクトって想像を絶するものだと考えます。酒好きな外国人たちが一斉に母国へ帰る、という表面的なものだけではなく「あぁぁ、そういう国になっちゃうのね……短期的視点だけでイスラム独裁主義に向かうの?」的な判断を各国からされるでしょう。

投資も観光収益も減ってくだろうなぁ。少なくとも上がることはないでしょう。上がるのは密造酒の売上と死亡者数だけではないでしょうか…。

禁酒にならなかったとしても規制は進むのだろうか。すでに酒販取扱い免許取得の難易度は高いし、酒税も十分すぎるほど高いと思いますが。これ以上どこを規制するんだろう……。購入時のID提示くらいはやってもいいと思いますが。

長くなってしまいましたが、けっきょく筆者が言いたかったのは、

政治家の皆さん!ちまちま重要でもないアルコールのことを議論する前に、インドネシアは他にやるべきことが山積みだよ!

ということなのかもしれません。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で

スマホ用広告スペース

スマホ用広告案内

Adsense

こんな記事も読まれています!

-インドネシア/ジャカルタの生活や文化
-, ,