年末にとても素敵な経験をしたので共有させてください。
皆さんはインドネシアの映画を観たことはありますか?
筆者の場合、ジャカルタでは映画が非常に安いので映画自体はよく観に行きますが、正直インドネシアの映画はほとんど観たことがありませんでした。
2016年に話題になった「My Stupid Boss」を観て、笑いの沸点が違うなぁとか感じたのみ。
ところが年末に飛行機の中で思わぬ感動体験に出くわしました。
インドネシアの超名作映画と呼ばれる「Ada Apa dengan Cinta?」です。
(アイキャッチの作品画像はthemalaymailonline.comより引用させていただきました)
本記事の目次
国民的映画とも呼べる、現代インドネシア映画の代表作
「Ada Apa dengan Cinta?」は2002年に公開された青春ラブストーリー作品。
この時インドネシア国内で青春映画が作られたのは実に20年ぶりの出来事だったそうです。
若い観客層を中心に瞬く間に人気となり、総動員数は250万人越え。インドネシア歴代映画の記録を更新した超大ヒット作品です。
2016年には続編となる「Ada Apa dengan Cinta 2」が公開され、公開前からLINEがプロモーションに使うなどで話題となっていました。筆者が最初にこの映画を知ったきっかけもLINEのプロモーションだったりします。
続編が作られる、というだけでプロモーションに使われるのですからまさに1作目は爆発的な人気だったのでしょう。
筆者周囲の話に絞れば、インドネシア人の若い人たちはインドネシア映画よりも海外作品を好むように感じます。インドネシア映画にはあまり見るべき映画はない、と。
余談ですが、過去にインドネシア政府が映画産業育成のために洋画の公開を制限した時期があったのだとか。結果は映画館へ行く人自体が減ってしまい、産業育成どころが産業全体が危機的状況になったのだとか。
それだけ海外作品の方を支持している、ということなのでしょう。
ただ、この作品だけは違いました。
そのような背景がある中でも、知人からは「Ada Apa dengan Cinta? は超名作だよ!観た方がいいよ!」と言われ続けてきました。
そして年末の飛行機内で映画リストを開くと「Ada Apa dengan Cinta?」、そして「Ada Apa dengan Cinta 2」が並んでいる。それは見るしかないですよね。
友情と初恋の間で揺れ動く、若い高校生2人の恋愛物語
いきなり「2」の話をしてもしょうがないので、「Ada Apa dengan Cinta?」について話します。
2も面白いですが、1のストーリーの上に成り立つので1の方が重要です(そして1の方が素晴らしい作品だと感じたので)。
ネタバレしないように概要だけ書きます…。
舞台はインドネシアの高校。
Cinta(チンタ)はインドネシア語で「愛」の意味ですが、主人公の女の子の名前でもあります(※)。
※Ada Apa dengan Cinta?は「愛に何が起きたのか?」という意味ですが「愛情」そして「チンタちゃん」の2つがかかっています。
Cintaは詩を愛する活発な女子高生。いつも仲良しの4名の友人とスクールライフを楽しんでおり、いわゆるスクールカーストでも上位の方に位置しています(いわゆるリア充)。
自信作を片手に詩のコンテストに参加するも、優勝はRangga(ランガ)という男子生徒が持っていきます。
CintaはRanggaにインタビューしに行くも、Ranggaは冷たくあしらいます(実際Rangaは熱意を持ってコンテストに参加したわけではない)。
その後は会えば喧嘩ばかりの微妙な関係が続きますが、やり取りの中でRangaの個性的なキャラクターにCintaは無意識で惹かれていきます。
いつの間にやらRanggaも惹かれていき、ついにデートの約束へ。
ところがここから物語は急展開します。
Cintaの仲良しグループの中には家庭内暴力に悩まされている子が一人いるのですが、デートの前にその子から「家に泊めてくれ…逃げ出したい」と深刻な電話が。
頭を悩ませるもCintaはRanggaとのデートを選択します。しかも友達には「嘘」をつきます。
この選択をきっかけに壊れ始める友情。
友情の大切さに気付いたCintaは、恋を選んだ自分に嫌気がさしRanggaとの関係を断ちます。
おっとここからは言えない!言ったらすべてわかってしまう!
お互いに惹かれながらも素直になれかったRangaとCintaのここからのストーリーがこの映画の80%です。
続きはご自身でお確かめください。
飛行機の中で3回泣いた、実力作品
ストーリーだけ書くとものすごくシンプルなどこにでもある恋愛映画です。
穿った見方をすると「20年ぶりの青春映画だからヒットしただけでしょ~~」なんてなってしまいますが、決してそうではありません。
筆者も飛行機の中で3回泣きました(その後2でも泣いたので合計5回泣いた)。
最後のシーンなんて鼻水をすすらざるを得ないほどの涙。
相当気持ち悪い日本人、と思われたでしょうね…。
なんでこんなに感動したのでしょうか?自分でも不思議でした。
筆者が振り返るにポイントは2つありました(筆者個人談ですので余談程度で聞いてください)。
あまりに純粋で美しい心の動き
主人公たちの心がとても純粋で、一つ一つの感情が強烈でした。
全部のシーンが「剛速球ストレート」で投げ込んでくるようなイメージです。
こんなにシンプルな映画は日本だとあまりないかもしれません。
この時代のインドネシアだったからこそ作れた、ということもあるのでしょうね。
海外の仕事で汚れはてた心を洗い流してくれる……かも。
ちなみに筆者は少女漫画を読んで泣ける人です。
主演の演技力が成すキャラ立ち
主人公、そして周囲の友人たちのキャラが立っています。
Cintaは正直そこまで可愛くはないのですが、The不器用な感じが非常に出ていました。
Cinta演じるDian Sastrowardoyoさんの才能があったのでしょう。
また、何より素晴らしいのは Ranggaを演じるNicholas Saputraさんの演技です。
決してハンサムではないのですが彼が醸し出す「超アンニュイ」な雰囲気が、詩を愛する文学少年Ranggaの魅力を引き出しています。
なんとこれがデビュー作だったそうです。まさに天才肌。
インドネシアにこれから関わるすべての日本人に観てほしい
筆者はこの映画を観て、インドネシアに関わる日本の方全員に推薦したいと感じました。
映画作品として素晴らしいという意味もあるのですが、インドネシア人を理解するという意味でも重要な作品だと思います。
インドネシアの文化や風習、雰囲気がわかるという意味ではありません。
確かに、映画内で政治的な話も出てきますし、風習がわからないと「?」となる部分もあるので、そこからインドネシアに対する理解が深まるという面も多少あります。
が、それ以上に「インドネシアの人たちも普通に恋して、嫉妬して、友情を大切にして、そして感動する」ということを肌で感じられることが大きいのではないかと考えています。
「あ、自分と同じだ!」という感覚です。
インドネシアを外から見るとどうしても宗教や文化の違い、経済発展レベルの違いなど「相違点」ばかりが強調されがちです。特にイスラム教が支配する怖い国、というイメージがいまだに強い気がします(※)。
※実際最近は真の意味で政教分離できるか否かを試されている感はありますが、6宗教が共存していることは事実であり、筆者の中ではこのようなイメージは強くはないのです。
たとえインドネシアの中に住んでいたとしても、インドネシア人とわかり合うきっかけというのはそうそうあるものではありません。
しかし、このような作品を観て感動し、「共通点」を発見することによって見方や考え方は変わると思うのです。
「Ada Apa dengan Cinta観たことあります?すごい素敵な映画だよね!」と共有することで距離が縮まることもあるかもしれませんし。
そういう意味では他の名作でもよいのですが、本作は入りやすいのかと思います(超泣いたし)。
どうやって観るの?
2は昨年2016年のヒット作なので見つけやすいかもしれませんが、1を観ていないとキャラクターの関係がさっぱりわからないので面白さは100分の1くらいになるでしょう。
1から見るべし。
じゃあ1はどこで観れるのかという話です。
まず筆者が観たのはガルーダエアラインの国際線です。
2がヒットしたこともあり、期間限定なのかもしれませんが今なら見れるはず!
乗る予定のある方はぜひチェックしてみてください(音声はインドネシア語、字幕は英語、で観れます)。
また古い映画なので大きな声では言えませんが、インターネット上の動画サイトに落ちているかもしれません。そしてインドネシアであればローカルモールのDVD屋でも見つかるかも…。
ただ、いっぱしの大人としてブログでそんなことは推薦も紹介もできません。
一応書いておきますが、ネット上で違法にアップロードされた映像や違法コピーのDVDを観ることは観た方も刑罰の対象になります。やめましょう。
日本語だと「ビューティフル・デイズ」という名でDVDが販売されていました。
amazonでは中古品として購入可能です。
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今は絶版のようです。稀少性が高いのかもしれません。
最後に
どのような形であれ、もしお時間、そして機会あればぜひ一度ご覧ください。
本当におすすめです。
2はまるで面白くない、ような書き方になってしまったかもしれませんが、2も面白いです。
1ではあどけない少女だったCinta達が大人に成長した姿を見せます。
1で可愛らしいなぁと思ていた子が2で巨大化していたのがショックでした。
インドネシア人はやっぱり太りやすいんだなぁ、とここでも違う意味で理解が深まります。
1と2と両方立て続けに観るのがおすすめです!