インドネシアの中にいるとインドネシア国内景気の揺れを感じます。最近は少し持ち直してきたかもしれませんね。
一方で日系企業の進出はそこまで影響を受けていないように感じます。2.5億の巨大な人口、さらに潤沢な生産年齢人口(≒働ける若者達)が生み出す「安定した経済成長」を求めて日本からは引き続き企業が進出しています。
まぁ、固い話はここまでにしておいて、簡単にいうと筆者の友人でもインドネシアに出張に来たり駐在したり、という話が少なくない。
そしてFacebookやLINEで質問が来るわけです。
「インドネシアってどうよ?」って。
ついに友人にまで話が来た、ということは同じく「どうよ?」と思う人は他にも多数いるのでしょう。
というわけで、今回は友人に向けた個人的メッセージも含みつつ、必ず洗礼を浴びるであろう事項や注意点を「インドネシアでの仕事で知っておくべきこと(覚悟すべきこと、とも呼べる)」としてまとめてみます。
「文化・宗教の違い」、「日常生活」、「社会システムや制度」などいくつかの観点があるのですが、今回は「個人レベルで仕事を進める上で理解しておいた方が良い注意点」としてわかりやすいものを出しました。
「日本と全然違ぇよ!仕事になんねぇよ!」とイラつく前に、事前に理解しておきダメージを減らしましょう。
ちなみに筆者はインドネシアに関わってかれこれ4年、インドネシア人と共に働く経営者です(最近は個人事業主化してきた…)。
本記事の目次
①ASEAN最弱のネット環境を覚悟せよ
ポータブルWi-FiのBOLTや、主要な携帯キャリアのサービスでようやくLTEが使えるようになったとはいえ、あいかわらずインドネシアのインターネットは安定しません。
仮にBOLTなどの比較的早い通信手段を持っていたとしても、場所によって接続できないことも日常茶飯事。オフィスや家庭で契約するプロバイダーも、契約上の速度はまず出ない。通信速度で1Mbpsが出れば最高潮!といった感じです。さらに、月末になると回線が詰まる(?)のか、速度が落ちることもしばしば。
極め付けは、雨が降るとネットが使えなくなります。
「いやいや、電波って雨に干渉されないでしょ?」と思うことなかれ。ホントです。インドネシア人に言わせれば浸水して回線が止まるのではないか、とのこと。大雨が降りだすと「うわー、ネット使えねぇわ」という会話が本気で始まります。
こんな状況ですから、日本と同じような気分でデータのやり取りをすると仕事が止まります。さらに自分がしなくても、日本からやられるとこれまた止まります。半日データのダウンロードしてた、みたいな無駄な時間を過ごすこともあるでしょう。
せめてもの打開策としては、「ファーストメディア」というプロバイダーと契約することです。インドネシア人、外国人問わず、「最も安定している」と定評があります。ただし、自宅やオフィスの場所によっては接続できないのでその際は諦めましょう。
②アポは1日3件が限界
インドネシアの都市部では渋滞が社会問題になっています。特にジャカルタの渋滞は「世界最悪」とも言われます。それでいて、ジャカルタでの主な移動手段は「車」というこの悲劇。だって、地下鉄はまだないですから(現在MRTが鋭意工事中)。
午前中に1本、午後一に1本、夕方に1本、が予定としては限界です。各アポの乱れ(遅延や渋滞)を考えると、3本すら厳しい時も多々。
筆者が日本のベンチャーで働いていた時は「目標達成のために1日7本のアポを1ヶ月つづけた営業のカリスマ」がいましたが、そんな計画を立てても1日で頓挫します。やめましょう。
バイクタクシーを使えば渋滞もすり抜けられますが、髪型が大きく乱れるので最終手段にしましょう。アポ到着時の会話が「髪どうしたんですか?」から始まります。
③ジャカルタでは渋滞も人生の一部
ちょっと前項とも重複しますが、ジャカルタ生活での渋滞はもはや避けられません。ジャカルタに住んでいて「俺は渋滞に一度も会ったことが無い」という人がいたら、その人はジャカルタには住んでいないでしょう。ジャマイカと間違ってませんか?。というくらい、日常茶飯事で突発的に発生します。
長い時は2~3時間車中に閉じ込められます。もう、これは渋滞をいかに自分の中に受け入れるか、を考えた方が良い。車の中でできる仕事をする、読書をする、運転手とインドネシア語の練習をする、いっそ寝てしまって回復に充てる、など時間の使い方を考えておいた方が良いです。
ちなみに、長い渋滞の中で携帯やPCの充電が切れると「果てしない絶望」に襲われます。必ず小さめのパワーバンク(小型充電器)を持ち歩いた方が良いです。
④アポの時間に揃うことが奇跡
ジャカルタに住むと奇跡の閾値が下がります。アポもその一つ。前提として社内会議も社外会議も、パートナーでもクライアントでも、来社でも訪問先でも、打ち合わせは時間通りに始まらないと思っておきましょう。
海外留学組が多いIT系の企業、外資系の企業、などでは例外的に超優秀なチームもいたりしますが、一般論としてインドネシア人は時間を守り(れ)ません。
もう、これは子供の時の教育でしかない。ローカルの文化では、学校の行事などで集まらなくても誰も怒られないし怒らないそうです(日本は小学校低学年から5分前行動を刷り込まれますよね)。その雰囲気は大人になっても変わらず、日本のビジネスマンなら誰しもが持っている「相手の時間を奪ってる」という時間泥棒的感覚は皆無です。
ひどい時はアポ時間を過ぎてから「ごめん、今日いけないです」と連絡が来ることもあります。怒っても何も解決しませんし、神経すり減らすだけなので、「そういうもんだ」と割り切った上で別の対策を考えましょう。
⑤「わかりました」は「わかりません」
「わかりました」の9割はわかっていません。また、「できます」の9割はできません。
インドネシア人の典型的なキャラクターの1つとして「見栄っ張り」というものがあります。自分を大きく見せたい人種なので、ついつい言ってしまうんですね。悪気はないし、その時は本人も「わかった」「できる」と本気で思っています。そのため、「本当にわかった?」などと詰めても「問題ないよ、ボス」としか返ってきません。
日本人は逆にリスクヘッジする人種なので、「2日でできる」と思っても「3日ください」と言います。その真逆だと思ってください。まぁ時と場合によってお互い良い部分も悪い部分もありますが。
さて、そんなインドネシア人たちとの仕事。事故を避けるためには、
- その場で自分から内容や段取りを説明させる
- 期限を超早めに切る
- マイクロマネジメントで毎日確認する(実際に経過を見せてもらう)
など方法はありますが、とにかくローカルの「わかりました」はだいたい「わかってない」ので気を付けてください。インドネシア人はイメージ写真のような「グッドマーク」が大好きなのですが、グッドマークが出たときこそ要注意です。
⑥日本語人材に頼りきってはいけない
貴方がもし英語を話せるのであれば、英語人材を使いましょう。理由は2つあります。
1つ目の理由は、例外的に「日本での社会人経験が長い人」は別ですが、通常同じ土俵であれば英語人材の方が仕事ができるからです。
「英語人材の方が優秀」というよりも「日本語人材は仕事ができない」と捉える方が正しいかもしれません。
日本語人材の場合は大学で「語学」を専攻していた人が多く、卒業後も通常のビジネススキルより語学スキルに重きを置いて仕事をしています。結果として、語学以外のスキルが育っていないことが多いです。
一方、英語人材は専門科目や目標を別の軸で持っていることも多く、ビジネススキルが高めの人も多いです。
2つ目の理由は、日本語を話せることで雇用側に油断が生まれる、からです。
ここは海外で、貴方は周囲100%を見知らぬ言語に囲まれて生活します。日本語をまったく使わないのって最初はけっこう辛いんです。そんな中、日本語で会話ができてしまうと、安心感からか「こいつはきっとわかってくれてるだろ」なんて思ってしまうのが人の性。でもミスジャッジです。中身はインドネシア人です。
この「日本語話せると油断しちゃう問題」は筆者もハマってしまったことがあります。頭ではわかっているんですが、難しいですよね。ゴルゴ13じゃないので、自分を100%客観的に見るなんでできません。部下が言う「大丈夫」を見極められず、仕事が火を噴いたことがあります。
⑦けっして人前で怒ってはいけない
インドネシア人は怒られたことがありません。子供時代に悪いことをしても「こら!」と怒られないのです。
インドネシア人は非常に「メンツ」を気にする人たちです。このメンツを子供にも当てはめる結果、人前でやたらに怒ってはいけない、という感覚があるようなのです。じゃあわざわざ家庭でひっそりと怒るかというとそうでもなく、全体的に「怒られ慣れていない大人」ばかりになっています。
人前で叱責し、プライドを傷つけるとどうなるか。冗談抜きに報復されることがあります。本当かどうかわかりませんが『斧で切り付けてきた』という逸話もあります。そこまでは無かったとしてもビザ関連で弱みを掴まれて内部告発されたり、ということは実際に今でも聞きます。
また、報復までいかずともまったく言うことを聞かなくなったり、急に会社に来なくなったり(まぁ怒られなくてもこういう人はいる)、ということもあります。
この「言うことを聞かなくなる」というのは怒られた側のプライドの問題だけではなく、「人はあまり感情的になってはいけない」というインドネシアの文化にも起因しています。「感情的になるやつは人としてダメだ」という感覚を持っているので、「おい!」と叱責してしまうと「あいつはボスとしてダメだ」と思われることもあります。特に断食のシーズンはその意識が高まる……はずなんですが、筆者は断食中に会議で感情が高まり殴り合いを始めたインドネシア人を見ました。うーん、感情的になっちゃいけなかったのでは?と突っ込みたくなりますよね。
まあ、注意のときはこっそりと別室に呼んで、冷静に諭すような口調で「叱る」に越したことはないでしょう。
まとめ
以上、筆者が時には従業員と、時にはビジネスパートナーと、培ってきた(?)経験を元に、新ジャカルタビジネスマンが最初にぶち当たりそうな問題点を洗い出してきました。
他にも思いつくことはたくさん出てくるのですが、あまり多すぎても大変なのでこの辺りにしておきます。
こうやって書くと「うわっ…ひどいな……」と再確認してしまいますが、海外で働くとはこういうことなのでしょう。日本の常識は通じませんし、一度相手を受け入れた上で少しずつ調整していくしかないのです。
また、筆者は新興国で働いていますが、仮に先進国で働いたとしても悩みは尽きないのかもしれません。
大変なことも多いですが、インドネシアはこれからが面白い国であることは間違いありません。この時代にジャカルタで働くことはプラスにこそなれ、マイナスになることはないはずです。
また、人懐っこくてマイペースなインドネシア人たちとの触れ合いは、日本では気づけなかった何かを教えてくれるのかもしれません(3丁目の夕日的なsomething)!その辺りはまた別でまとめてみたいと思います。
これからジャカルタで働く予定の皆さん、ともに明るく楽しく頑張っていきましょう!